PTFEはフッ素樹脂の種類のひとつ!どんな特性がある?
樹脂を使っていると目にする「PTFE」という物質。
基本的に工業用品に使われていますが、暮らしの中にもPTFEは使われており、生活にとって重宝される物質でもあります。
今回は、PTFEとはどんな特性があるのか、使い方やテフロンとの違いなどを紹介します。
PTFE とはどんなもの?
PTFEは「ポリテトラフルオトエチレン(Poly Tetra Fluoro Ethylene)」といい、フッ素原子と炭素原子で形成するフッ素樹脂です。
1938年に米国のディポン社の研究員によって発見されました。
フッ素樹脂の種類の中でも、さまざまな特性があることから、ディポン社は「テフロン」と名付け1946年に製品化しています。
PTFEといえばディポン社が世界的に有名ですが、PTFEの製造や研究をする企業は他にもさまざまあります。
フッ素樹脂とは?
PTFEはフッ素樹脂の種類のひとつ。
フッ素樹脂とはプラスチックの種類のひとつで、フッ素樹脂の中にはPTFEやPFA、ETFE、PVDFなどの種類があります。
フッ素樹脂は、蛍石と呼ばれる石を硫酸と反応させて作られた、フッ酸が原料。
PTFEは、フッ酸とクロロホルムを反応させ、熱分解して作られたものです。
PTFEはフッ素樹脂の約6割の需要量を占めており、ポリエチレンやポリ塩化ビニル樹脂と比較すると、熱や酸化などに優れた特性を持っています。
そのため、多くの場所でフッ素樹脂のPTFEが使われています。
PTFEの特性
PTFEは、建築から医療業界まで、さまざまな分野で取り扱われている優れた物質で、私たちの生活に欠かせないものとなっています。
どのような特徴を持つか見てみましょう。
・耐薬品性
・フッ素水素の酸化に強い
・摩擦に強い(摩擦係数が極めて小さい)
・高温に強い(200°の熱でも溶けない)
・寒さに強い(-200°の寒さでも壊れない)
・撥水性に優れている(非粘着性)
一般的に、ポリ塩化ビニル樹脂などの物質は、約100°の熱を加えただけで柔らかくなり変形します。
樹脂素材は紫外線を浴び続けるとボロボロと劣化しますが、PTFEは200°以上の熱を加えても溶けないことはもちろん、分解して変形する心配がありません。
また、耐薬品性に優れた性能があり、高温高濃度の強酸やアルカリ性の薬品に触れても、PTFEは溶けることはほとんどないでしょう。
これだけ優れた特性を持つ理由は、炭素を水素ではなくフッ素が守っていることが関係しています。
通常、樹脂が酸や熱などの外部刺激を受けると、水素を無視して炭素結合まで到達して破壊します。
しかし、PTFEは水素ではなく、フッ素と炭素が結合した樹脂構造なので、他の物質に比べて熱や薬品に強いのです。
PTFEにもデメリットがある
さまざまな場面で活躍するPTFEですが、使用するに当たりデメリットがあります。
それが、好きな形に成形加工するのが難しい点です。
PTFEは加熱しても溶けないため、高温に弱い樹脂のように溶かして型枠に流し込むという加工はできません。
とはいえ、PTFEは粉末にして圧縮加温することで、好きな形に成形加工できます。
ただ、他の樹脂に比べて成形加工する工程に手間がかかるため、一般的な成形加工の会社では対応が難しいのが現状です。
PTFEの使い方は?
PTFEは成形加工が難しい物質ですが、暮らしの中のさまざまなパーツで使われています。
耐熱性や耐寒性、撥水性など、優れた特性を活かして、次のような環境で必要不可欠な物質です。
屋根材
PTFEは紫外線の影響を受けにくく、撥水性に優れていることから、屋根材として重宝しています。
例えば、東京ドームの屋根もPTFEが使われており、長い間、外部刺激から守っています。
屋根材は住宅にとって欠かせないため、屋根膜材料にこれからも選ばれることでしょう。
医療用品
耐薬品性や非粘着質、弾性などの特徴を活かし、PTFEは医療用品に広く使われています。
例えば、薬品ボトルや注射器、人工血管、人工心臓など、命に欠かせないパーツの一部に使われています。
医療機関ではさまざまな薬品が使われ、劣化スピードの早い物質は使えないため、PTFEは大きな支えなのです。
自動車の部品
PTFEは摩擦性や絶縁性、耐熱性の特性が強いため、自動車部品では欠かせません。
自動車部品の中でも、最も多くPTFEが使われるのはベアリングです。
ベアリングとは軸受(じくうけ)とも呼ばれ、機械のパーツが回転する軸を支える部分をいいます。
自動車やバイクなどの機械製品にベアリングがないと、摩擦が生じてしまい上手に回転できません。
自動車1台で100個以上のベアリングが使われているので、PTFEの需要性はとても高いことがわかります。
PTFEとテフロンの違いはなに?
PTFEといえばディポン社が名付けた「テフロン」をイメージする人が多いでしょう。
テフロンはディポン社の登録商標なので、「PTFE=テフロン」ではありません。
実際に、ディポン社のテフロンは、フッ素樹脂の種類であるPFAやFEPも含んでいます。
テフロン加工のフライパンや鍋は、焦げ付きがなく使いやすいため、家庭でもよく選ばれていますが、「PTFEが含まれる製品」なので同じ物質とはいいきれません。
まとめ
PTFEはフッ素樹脂のひとつで、熱・薬品・摩擦などに耐性があり、さまざまな強みを持つ素材です。
他の樹脂素材に比べて劣化スピードが遅いため、長く使う場所には欠かせません。
建築資材や医療用品など、さまざまな分野では活躍する素材ですが、好きな形に成形加工するのが難しい点もあります。
特性を把握した上で使用するようにしましょう。